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2011.07.16 17:00 更新

卵焼きバトル? 演劇ユニット ノヴァの刺身、23日から『イヌと肉』公演

inuegg.jpg 真夜中のリハーサル、女優の湯田 葵さんが駅弁に入った卵焼きを頬張るシーンを睨みながら、「ひとりだけ!」と演出の岩元恵理さんがなじります。
 稽古は就業時間後に参加する社会人メンバーが多く、夜更けまで続くのです。その日、演出家の夕食は音響設備の影でパクついたアメリカンドッグでした。

 一緒に旅をする青柳役の福迫久孝さん(上写真右)が台本通り「僕のもあげる」と言うので、少女役の湯田さんは箸を伸ばし卵焼きおかわりゲットです。演出家の視線が気になったか半分に切り分けたものの、うれしそうに平らげました。

wamoeri.jpg 23日に鹿児島市中央公民館で初演が迫る演劇ユニット ノヴァの刺身『イヌと肉』(作・演出 岩元恵理さん、左写真)には、そんな見るだけでほほ笑ましいシーンがたくさんあります。
 旅をしたり、恋をしたり。ジュース、アイス、唐揚げ、おにぎり。
 オレンジゼリーに似た日没の海、夕陽が照りつける炎の河、恒星をかすめ消え去る流れ星。
 聞こえてくる音声もたくさんあります。「閉まるドアにご注意ください」のアナウンス、通り過ぎる列車の警笛、ケータイの呼び出し、マンションに響くサイレン。
 「何か起ればいいのに」
 深夜のコンビニで働く大卒フリーターのリコ(平岡京子さん)が、高校時代のボーイフレンドに似た客を見かけて回想する場面から、不思議なストーリー『イヌと肉』が始まります。

 リコの親友・武田役で客演する大毛 彩さん(劇団鳴かず飛ばず、下写真右)は、旗揚げから知っている演劇ユニット ノヴァの刺身の芝居に「詩を感じる」と言いました。「俳優が1人で複数の役割を演じることがよくある」とも指摘します。

inupapiko.jpg  詩が独自の美意識を持ち、洗練のスタイルを与えられた心情の発露であるなら、なるほどノヴァの刺身は詩的でしょう。たとえば、『イヌと肉』では劇中いくつかの事件が起きますけど、お約束とも言える事件の再現シーンはほとんど排除されています。おかげで物事の因果に縛られず、心は自由で、かといって絵空事に逃げもしません。ここらへんきっぱりしています。
 これは美学上の問題なのでしょうか?
 たいへん大胆に推測すれば、ノヴァの刺身の公演は、岩元恵理その人がぜんぶを投げ出し、打ち込み、演劇に捧げて、観る者へ血肉を分け与えようとする聖餐なのかもしれません。その投げ出し方を描いたのが戯曲であり、身の振り方が演出であり、詩はそのとき劇空間で反物質のように生まれ、新星のように爆発するのです!

inu3.jpg 「詩を感じる」には岩元さんとユニットを組む湯田さんも同意見です。ムダに卵焼きを食べていたのではありません。脚本を読み解きながら、何を伝えようとしているのか? そのうえ何を隠そうとしてるか? まで考え進めてしまいます。
 湯田さんが演じるのは、少女モモコと成人したモモシタの二役。生きているのか死んでいるのかさえ不明の人物。「劇作家に読み取られているのは私自身?」彼女の中で演劇と現実の境界が曖昧になってゆくようでした。

 いよいよ、舞台衣裳も道具も揃ってきた、岩元恵理さんの最新作『イヌと肉』。
 とにかく肉っておいしいものです、卵焼きもかなりイイのですが、肉は骨付きもあるし。ノヴァの刺身は鮮度が違います☆
 みなさんも少しかじってみませんか。劇場のかぶりつきで。

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