2010.09.03 00:28 更新
龍馬の海のたそがれ/桂浜(高知市・高知県)
高知の桂浜は、2つの岬に挟まれて弓状に砂浜が広がる美しい海岸線である。風情は確かにあるのだが、何ゆえこれほど有名なのか、わざわざ行くほどの場所なのかと問われると、いささか答えに詰まるものがある。
とはいうものの、この地は月見の名所。なるほど、満月の夜なぞ、さぞかしムードがありそうだ。「美しい日本の歩きたくなる道」の一つだそうで、恋人たちが愛を語らうに良さげなのは間違いない。
ただ、穏やかな砂浜が広がるわりに、ここで泳ぐ人は無い。見た目に寄らず潮流が早く危険なためで、一帯は遊泳禁止。甘く構えて命を落とす者がしばしば出るというから、誠に美景と美女は油断がならない。
ちょうど夏の日暮れ時。うだるような暑さが引き、気持ちの良い潮風が浜を吹き抜ける。旅の疲れと風の優しさに気が緩み、砂上に転がって吸い込まれるように眠った。「あぁ、気持ちいい...」――こんなにゆっくり海を見たのは何年ぶりだろう。このまま、夜の月見としゃれ込むとするか。
どれくらい眠ったか――ふと、頬に冷たいものが当たって目を覚ます。すでに日は落ちているが、どうにも空模様がおかしい。訝しむうち、ポツリ、ポツリと雨粒が顔を打つ。「こりゃいかん!!」――灯りが点る遊歩道を、大急ぎで引き返す。ようやくバスに飛び込んだまさにその時、猛烈な本降りが始まったのには肝を冷やした。
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(写真上)弓状の広がりが美しい桂浜。岬の突端には竜王を祭る祠がある
(写真下)遊歩道に灯りが点り、ムードあふれる夕刻。満月の夜にぜひ訪れたいものだ