2010.07.03 00:46 更新
幻の九州横断鉄道/高森湧水トンネル公園(高森町・熊本県)
険しい九州山地で隔てられた熊本と宮崎――両県を鉄道で結ぶ計画は、日清戦争後の明治時代から持ち上がっていた。さまざまな紆余曲折を経て、熊本サイドからは、南阿蘇を高森へ延びる高森線(1928年)、宮崎の要衝・延岡からは高千穂線(1972年)がそれぞれ建設され、残るは両線の結合のみとなる。最後の工事は1973年から始まり、4年後には待望の全線開通を見込んでいた。
ところが1975年2月、掘削中の高森トンネル2㌔地点で、地下水脈を破るアクシデントが発生。出水は毎分36㌧に達し、町内の湧水が8箇所枯れ、多数の家が断水する騒ぎとなる。工事は一時中断されたが、その後国鉄の経営悪化などから再開の見通しが立たず、ついには高森線・高千穂線とも廃止(いずれも第3セクター化)。九州横断鉄道の夢は幻に終わった。
元凶となった件のトンネルは、今でも町の一角に姿をとどめている。入り口から550㍍が解放され、清冽な水が湧き出す憩いの場・観光の名所として人気だ。悲願の鉄道はついに叶わなかったが、自然の脅威は形を変え、地元に新たな恵みをもたらしている。
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(写真上)本来なら鉄道線となるはずだった、高森湧水トンネル公園。今では憩いの場として人気だ。夏の水辺では愛嬌者のミヤマアカネが羽を休める
(写真下)トンネルの内部。掘削は2000㍍まで進んでいたが、現在解放されているのは1/4の区間である。最奥では大量の清水が噴き出し、のどを潤す観光客も多い