2010.04.30 02:27 更新
合掌造りの舞台裏/白川郷③(白川村・岐阜県)
白川郷の合掌造り家屋は、多くが民家・民宿など現役で使われている。一部の建物は内部を公開しているので、その構造や往時の暮らしぶりを知ることができる。
合掌家屋は建物自体が巨大で、とりわけ屋根裏が広々しているが、これはかつて天井で蚕を飼育していたため。数年に一度は凶作といわれる貧しい山里で、養蚕は民の暮らしを支える貴重な収入源だった。力を合わせて生き抜くため、数十人の親族が同居することも珍しくなく、いきおい建物も相応の規模になったのである。
巨大な三角屋根は、梁に固定せず、建物に乗せただけの簡単な造り。骨組みの材を荒縄やネソ(マンサクの若木)で締め付けて組まれ、釘やかすがいは使われていない。鉄が貴重だったこともあるが、屋根の葺き替えの際、簡単に修復できるためである。囲炉裏から立ち上る煤は、天井全体に染みわたることで虫除けと防湿に役立ち、建物を長持ちさせるコーティング剤の働きをする。外観美に目が向きがちだが、合理的な知恵がちりばめられた内部構造も興味深い。
また、北陸は日本有数の浄土真宗の牙城であるが、旧家では人の背丈ほどもある巨大な仏壇が据えられ、信仰の篤さをうかがわせる。狭く厳しい地では、人々の助け合いとともに、祈りこそが心の拠りどころだった。まっすぐ天を指す合掌屋根の佇まいは、山の民の心を表しているかのようである。
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(写真上)合掌家屋の屋根裏は、蚕を飼うための広大なスペース。部材は荒縄やネソで締め付けて固定されている。
(写真下)赤々と燃える囲炉裏。分厚く固まった煤は、建物を長持ちさせる効果がある。年季の入った調度や巨大な仏壇などを拝見できる家もあり、観光客の人気を集めている。