2009.07.20 00:31 更新
豆蒸気 湯の町を駆ける/伊予鉄道「坊っちゃん列車」
(松山市・愛媛県)
「乗り込んで見るとマッチ箱のような汽車だ。ごろごろと五分ばかり動いたと思ったら、もう降りなければならない。道理で切符が安いと思った。たった三銭である...」(夏目漱石「坊っちゃん」)
「ピョーーーーーッ」――道後温泉のアーケード口でからくり時計の音に聞き入ると、路面電車の駅から甲高い汽笛が響いてくる。振り向けば、おもちゃのようにかわいい蒸気機関車。感嘆の声が上がり、人々が次々カメラや携帯を向ける。松山名物「坊っちゃん列車」の到着である。
形は紛れもないSLだが、実はディーゼルエンジンで動くレプリカだ。煙突からこぼれる白煙は、雰囲気を出すための水蒸気。ドラフトはスピーカーから流される。本物の蒸気機関車にしなかったのは煤煙の害を考慮したのと、何より保守管理の都合だろう。
列車は毎日朝から夕刻にかけて、30分~1時間おきに運行される。文学と史跡の郷・松山を、ガタゴト汽車に揺られて巡るのも楽しい。旅情と明治ロマンを振りまきながら、豆蒸気は今日も出湯の町を後にする。
yu
(写真)道後温泉駅に到着した「坊っちゃん列車」 折り返しまでのひとときを、引込み線で飾られて過ごす。