2008.12.31 00:11 更新
「上野発の夜行列車降りたときから 青森駅は雪の中...」――石川さゆりの名曲「津軽海峡冬景色」の歌い出しは、短いながら北辺の風情を見事に言い当てている。「北へ帰る人の群れは誰も無口で」――青森駅で降り立つ旅人が一目散に向かうのは、北海道へ接続する青函連絡船。長旅に疲れた誰もが足を伸ばして座れる桟敷席を狙うので、長大なホームを黙々駆けてゆくのだ。ヒットメーカー・阿久悠が世に送り出した作詞群の中でとりわけ評価が高いが、冬の青森を目の当たりにすれば、言葉の絶妙なセンスがよく分かる。
青函連絡船が廃止され、内地と北の大地を結ぶ主役が航空機に変わった今、上野と青森を結ぶ夜行列車は「あけぼの」1本に減った。何とも厳しい現実だが、帰省ラッシュを迎える年の暮れは全車満席の盛況だ。大小の荷物を抱えた家族連れに交じって北を目指す。珍しい寝台列車に興奮気味の子供たち、一杯機嫌で酒を酌み交わす年配客、改札と案内に忙しい車掌...。古きよき"国鉄"の面影を垣間見て、大いに胸が満ちた。
一夜明けた東北は大荒れだった。優勢な低気圧の暴風に足を抑えられ、我慢の北上が続く。秋田と青森の県境はすっぽりと雪に埋まり、黒々とそびえ立つ杉木立が、無言で列車を見送ってくれた。
ようやくにしてたどり着いた青森駅。難行の末の45分遅れは、この荒天にあっては十分な健闘と言っていいだろう。気だるさと安堵の表情を浮かべつつ、老若男女が階段に消えてゆく。静けさが戻ったホームを振り返り、白く凍りついたブルートレインにそっと黙礼した。
yu
(写真上) 上野発車前(左)と青森到着後(右)の「あけぼの」号。冬季運行の過酷さがよく分かる
(写真中) 冬の東北はしばしば大荒れになる。白波が打ち寄せる日本海、
雪に埋もれる杉木立を横目に列車は進む
(写真下) 上野から13時間――大勢の帰省客がホームを急ぐ青森駅